2019年2月2日(土)、日本陶磁器センタービル多目的ホールにて、【東海市民社会ネットワーク研究会@愛知 NPO×行政の協働事例発表会~SDGs:エネルギーをみんなにそしてクリーンに~】を開催しました。
このイベントでは、SDGsの7番目のゴール「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」の実現にむけて、市民社会組織が多様なセクターとどのように連携して社会課題を解決していくか、ということをテーマに、ゲストトークやグループディスカッションを行いました。
ゲストは、石井伸弘さん(電気をカエル計画 代表・かえる農園 代表)、山本元さん(NPO法人気候ネットワーク 研究員)のお二人。
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●市民社会に多様なセクターを巻き込む「方法論」:石井さんのお話
石井さんは、NPO支援のお仕事を10年近く務めたのち、農家に転身されました。東日本大震災以降、農業のかたわら、ボランティアでエネルギー分野の取り組みを始めます。「本職でなくてもここまでできる、というふうに受け取ってもらうこともできる」と前置きされてからのお話でした。
「協働」とは、さまざまなセクターが同じ方向を向いて、各々のできることを重ね合わせることで実現するもの。でも、場合によっては、同じ方向を向いていないところから始めなくてはいけない社会課題もあるし、一度同じ方向を向いていたとしても、時間が経つにつれて離れて行ってしまうこともある。石井さんは、それを「社会の窓」という言葉で表現しました。
「2011年3月10日に脱原発デモをやっても、誰にも響かなかった。でも、3月12日には響くようになった。社会課題には、広く一般の関心が高まっている=「社会の窓が開いている」時期があるが、その時期はそんなに長くはない。社会の窓が開いている時に、しっかり動かすことが重要。
原発問題の場合、いまは、社会の窓は限りなく閉じている状態に見える。国主導の海外輸出は失敗した。電力会社も、今ある施設の減価償却が終わったら、新しいものを作ろうとはなかなかなりにくい。安心してはいけないが、長い目で見ると、決着は着きつつある。」
石井さんは震災直後に、「原発の電気を使いたくない」と思った。電力自由化が未実現だった当時は、自分自身が契約する電気会社を選択することができませんでした。しかし、「自治体」には選択できる権利があった。自分は買えないけど、自分の暮らしている町が、原発フリーの電気を買うことができれば、社会は変わっていく!と思ったそうです。
その思いから始まった「電気をカエル計画」は、さまざまな調査を展開し、その結果を活用して社会にアピールし、自治体や議会を動かしていく、というプロセスを繰り返します。例えば、敦賀原発からの「風船調査」によって、原発から放出された放射性物質の拡散範囲を推定する調査は新聞にも掲載され、その後岐阜県が高精度のシミュレーション調査を実施することを喚起しました。さらに、そのシミュレーション調査の結果を受けて、「電気をカエル計画」は県内の各自治体に避難計画の策定状況を調査します。
社会を変えていくには、市民のボランティアであっても、専門性が必要。どのように専門性を高めていくかの工夫も、石井さんからご紹介いただきました。
「自分たちの活動が、どれだけ社会が脱原発化していく役に立ったかは分からない。でも、関わった自治体の行動は変わったと思う」と語る石井さん。今は、地域新電力の取り組みに注力しています。
●変わりつつある「炭素社会」:山本さんのお話
山本さんからは、世界の再生エネルギーの状況についてご紹介いただきました。世界の投資マネーが急速に化石燃料から撤退している「ダイベストメント運動」、自然エネルギー100%を掲げる大手企業によるプラットフォーム形成、司法の場でも再生エネルギー導入が後押しされつつあるなど、先進各国ではさまざまな事例が積み上がってきています。「世界の潮流は、当初の予想を大きく超えている。具体的な変化を生み出していくためには、地域に根ざして活動していくことが大事」と語っていただきました。
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お二人からの話を受けて、参加者同士でグループディスカッション。
市民社会組織が、「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」にむけて、どのような展開ができるかを考える1日となりました。
以上