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【報告】東海市民社会ネットワーク研究会@三重を開催しました

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2019年3月2日(土)、桑名メディアライヴにて、【東海市民社会ネットワーク研究会@くわな NPO×行政の協働事例発表会~SDGs:陸の豊かさも守ろう~】を開催しました。このイベントでは、SDGsの15番目のゴール「陸の豊かさも守ろう」の実現にむけて、「SDGs目標間のジレンマと協働」をテーマに、ゲストの講演やグループディスカッションを行いました。

まずは、四日市自然保護推進委員会 副会長の寺田卓二さんから、ご自身が取り組まれている自然観察会やESD(持続可能な開発のための教育)普及にむけた活動についてお話がありました。寺田さんは、活動を通して四日市の自然環境の変化を感じるようになったと話します。「行政と協働して地域の自然環境や特定外来物分布の調査もしています。外来種の調査では、セアカゴケグモが市内全域に広がっていることがわかりました。里山は、マツ枯れ、タケの侵入、ナラ枯れが急速に進んでいます」。2013年からは他団体と協力し合い、南部丘陵公園の里山保全活動をはじめました。少しずつ木を伐採して里山の手入れをすることで里山の自然がよみがえり、准絶滅危惧種ササユリも戻ってきたといいます。

寺田さんらは、市内の山林に計画されたメガソーラー建設(足見川ソーラー、四日市ソーラー)についても、問題意識を持って行動しました。メガソーラーを規制するための法整備は十分に整っておらず、いくら近隣住民が建設に反対しても計画が変更になることは難しいのが現状です。「豊かな里山を守るためにできることはないかと自分なりに考えました。計画地の立ち入り調査、県への意見陳述、住民にメガソーラーの問題点を訴えるシンポジウムを開催するなど、さまざまな取り組みをしました。すると議員や行政職員の方も思った以上に動いてくれました。」足見川ソーラー計画はエリア内に絶滅危惧種のサシバのつがいがいることがわかったことを機に、事態は展開します。メガソーラー建設に関するガイドラインが策定され、メガソーラー建設事業者に対する知事意見が出されました。知事意見に反する回答をした事業者に対しては、より厳しい勧告がだされ、メガソーラー計画は当初の規模から縮小して進めることとなりました。

寺田さんはお話の中で参加者にさまざまな問題提起を行いました。たとえば、行政から事業を受託して実施することについて、「行政職員が現場感覚を知る機会を奪っているように感じます。昔は市民も行政も一緒に活動していた。最近はなかなか行政職員が現場に出てこない。現場がわからない人たちが助成金や補助金の施策を作っているのは問題ではないでしょうか」と投げかけます。さらに、「メガソーラー開発は里山の自然を壊すと言えど、クリーンエネルギーの確保という名目があります。自然を守ることも、再生可能エネルギーをうみだしていくことも大事です。SDGsの2つのゴールのなかでどう折り合いをつけていくのが良いか、皆さんにも考えてもらいたいです」と参加者に語りかけました。


次に、ぎふNPOセンター理事長 野村典博さんより、市民の伊勢志摩サミットの環境分科会で作成した提言書についてお話がありました。野村さんは流域思考というワードを使って、物事や課題解決策を考えるアプローチ方法を説明しました。「流域とは地理用語で、降水を集める区域で、山の尾根から尾根で囲まれた範囲です。私たちの生活文化も流域によってまとまっています」。経済やエネルギーなどの計画についても、行政区画ではなく流域ごとで考えることで視点が制御され、施策やプログラムを作りやすいとのことでした。


続いてNPO法人泉京・垂井の神田浩史さんより日本政府の国際協力・ODA政策策定に携わった経験から、政府とNGOとのかかわり方や協働の歩みの変遷について、話題提供がありました。「NGOが事業補助金をもらうようになり30年。NGOの人材継承についても課題を感じている」と意見を述べられました。

イベントの最後には、参加者がグループに分かれディスカッションを行いました。参加者からは「SDGsのゴールが対立することもあるが、いったんSDGsというゴールを忘れて、自分たちの暮らしという視点から考え直してはどうか」「市民がどれだけ自分のこととして、当事者意識を持てるかが問題である」「流域思考という考え方はとても新鮮で、防災を考えるときにも参考になるのでは」など、さまざまな議論や意見がなされました。

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